News

2025.12.08

システム延命の損益分岐点:「改修」か「作り直し」か?プロが教える3つの判断基準

更新日:2025年12月23日

「このシステム、もう10年動いているから大丈夫」
「改修するより、このまま使い続けた方が安上がり」
そう思っていませんか?

実は、放置されたシステムの改修コストは、時間とともに大幅に増大します。
技術の老朽化、ブラックボックス化により、 保守・運用がより困難になるためです。
弊社の経験では、特にスマートフォンアプリの場合は3年程度放置すると、OSアップデート対応や機能改修の工数が大幅に増加し、 作り直しになるくらいの改修費用がかかります。

では、いつ「改修」すべきで、いつ「作り直し」すべきなのか?
今回は、この判断基準をプロの視点でお話しします。

1. 放置が許される境界線と、致命的になるリスク
大きな声では言えませんが、個人的には、完全クローズドな環境で特に業務に支障が出ていなければ、無理に手を付けなくてもいい場合もあります。
逆に、手を付けることで、落ち着いていたトラブルが多発するようになることもあるからです。

しかし、以下の場合は放置は厳禁です。
改修するか、作り直すかの判断が必要になります。

周辺環境への依存度が高い場合:
システムを動かしているOSやブラウザなどの周辺環境に依存している場合、周辺環境の仕様が変われば、間違いなくシステムは動かなくなります。
逆に言えば、周辺環境が変わらなければ問題なく動き続けますが、周辺環境は、ホスティング会社(サーバー会社)やOS会社などにより、セキュリティ対策として強制的に更新される場合があるので注意が必要です。
自分たちが「変えたくない」と思っても、外部要因でシステムが動かなくなる「期限」が突然やってくるリスクがあります。

オープンなシステムの場合:
当然、セキュリティ面での改修は必須になります。
表面上は穏やかに見えても、見えないネットの裏側では不正アクセスを目的に、脆弱性が無いか探りを入れる何千何万何十万ものアクセスが発生しています。
セキュリティホールを突かれたら、情報漏洩やデータ消失といった直接的な被害だけでなく、自社のシステムが「踏み台」にされ、他社を攻撃する加害者になってしまう恐れもあります。
一度信頼を失えば、取り返しのつかない大きな痛手を被ることになります。

スマホアプリの場合:
冒頭でもお伝えしましたが、スマートフォンアプリは、OSがガンガンバージョンアップしていくため、動いているからと放置していると改修コストが大幅に増加します。
スマートフォンアプリは、ストア登録時に最新OSに対応していないと審査が通りません。
放置していると、改修では対応できないレベルの修正、つまりほぼ作り直すようなことになりかねません。
弊社のお客様も構築したアプリを3年間、放置した結果、全てを作り直すことになりました。

2. 【診断】見逃してはいけない9つのSOSサイン
「動いているから大丈夫」という考え方のままいくと、後に大きなコストを招く場合があります。
システムは、以下のようなサインで「SOS」を発しています。
自社のシステムがどうなっているのかチェックしてみましょう。

以下のチェック項目のうち、3つ以上に該当する場合は、早急な対応が必要です。
5つ以上の場合は、作り直しを含めた抜本的な見直しを推奨します。

改修が必要な「具体的なSOS」チェックリスト
■ 効率性・安定性の問題

① 動作が重い
なぜ、動作が重くなっているのかを、まず確認するべきです。
データベースやログファイルが大きくなり過ぎて、書込みや読込みに時間がかかっているのかもしれません。
サーバのハードウェア自体のスペックが低い場合もあります。

②現場の作業が手作業に逆戻りしている。
ビジネスモデルが変わった事で、システムが使えなくなっているパターンです。

③ 何らかのシステムエラーが発生する
システムは微妙なバランスの上に成り立っています。
少しのバランスでも崩れると、何らかのエラーが起きるようになります。

④設計上ヒューマンエラーが起きやすい仕組みになっている。
そもそもの問題となります。
例えば、削除ボタンを押したときに確認メッセージが表示されずに、いきなり削除されるなど、担当者が気を付けながら使っているような場合は、いずれ何らかのトラブルになります。

■ 環境・依存性とセキュリティの問題
⑤ OSやブラウザのバージョンアップなど周辺環境に依存している。
システムは稼働するOSに依存して構築されます。
稼働するOSをバージョンアップする場合は、システムのバージョンアップもセットになります。
また、昨今のシステムは、ミドルウェアやライブラリと呼ばれる第三者が作ったソフトウェアの部品を利用していることが一般的です。
それらの部品のバージョンアップが必要になる場合も、システムの改修は必須です。

⑥ オープンなのにセキュリティ対策が不十分。
OSやブラウザ、システムで使用している部品のセキュリティホールが発見された場合など、早急に手を打つ必要があります。
システムが稼働しているサーバのネットワーク設定も定期的に確認するのが不可欠です。

■ 企業が見落としがちな「隠れた危険なポイント」
⑦ ブラックボックス化:
担当者が辞めて誰も全体像を把握できていない場合です。
そもそもなぜ、今の形になっているのか不安の中で使う事になります。

⑧ 外部連携の老朽化:
連携先のシステム変更により、いつの間にか連携できなくなっている場合です。
定期的な連携が必須で、それが業務上重要であれば気が付きますが、それ以外の場合では、数ヵ月経ってから判明することになります。

⑨ 慣れによる業務の非効率化:
古い業務のやり方に合わせたシステムがいまだに稼働しており、システムの都合に合わせて非効率な業務を強いられている場合です。
システムではなく、あくまでもビジネスに合わせるのが鉄則です。
不要な人件費がかさむくらいならシステム改修を行った方が長期的な目で見ると安上がりです。

3. 【判断】改修vs作り直し:決断の境界線
「改修」と「作り直し」は、中長期的なコストとリスクを見て判断すべきです。

■ 改修やちょっとした修理で済むケース
既存のデータ構造を大きく変更しなくても実現できるものは、改修でいけそうです。
・画面の作りだけを見直したい、デザインを刷新したい。
・処理速度を上げるためにチューニングするだけで済むような場合。
・軽微なOSやブラウザのバージョンアップ対応。

■ 作り直しになるケース
・構築費に迫るコスト:
改修費用が構築費に迫るようなら、作り直したほうが賢明です。
改修費用が新規構築費の6~7割を超えるようなら、新しく作り直したほうが結果的に耐用年数が伸び、安上がりになります。

・システムの土台 (設計や基盤)が老朽化している (土台が腐っている状態):
改修してもいつまで経ってもバグが直らず不安定なシステムは、そもそも土台が悪い可能性があります。

・誰も中身を理解していないシステム:
当初、携わっていた担当者が退職し、ドキュメントも一切ないシステム。
何かの拍子で動かなくなる可能性があるため、ビクビクしながら使うことになります。

・業務の非効率化:
古い業務のやり方に合わせたシステムが稼働しており、システムの都合に合わせて非効率な業務を強いられている場合。
システムではなく、あくまでもビジネスに合わせるのが大前提です。

・大幅なOSやブラウザのバージョンアップ
上記でもお伝えしましたが、システムはその稼働するOSに依存しています。
​​​​​大幅なOSのバージョンアップは、システムの土台も変更する必要がでてきます。

★それでも迷った時の「究極の問い」
もし今、予算の制約がない状態でゼロからこのシステムを作るとしたら、「今と同じ形(設計)」にしますか?
もし答えが「いいえ、もっと違う形にする」であれば、それは単なる修理ではなく、未来のための「作り直し(再設計)」が必要なサインかもしれません。

4. 【実践】プロが教える改修前の3ステップチェック
業務とシステムのズレが出てきたために改修したい場合、まずは、最適な業務の理想は何かを考え直したいですね。
システムはあくまでビジネスを前に進めるための手段でしかありません。
システムにビジネスを合わせたら、本末転倒となります。

【事前チェックの3ステップ】
ステップ1:業務整理とギャップ把握
最適な業務フローの理想を考え、その理想と現在のシステムのギャップを明確にする。

ステップ2:土台の健全性チェック
・改修するシステムの土台が腐っていないか確認する。
・システムが利用しているOSやミドルウェアのサポート状況、ドキュメントの有無も大切。
・そもそも土台となる部分に脆弱性がないかセキュリティ診断でチェックする。

ステップ3:コストとリスクの比較
・作り直しと改修、それぞれ見積もりを出す。
・両者の中長期的なコストやリスクを考えて、最も費用対効果の高い方を選択することになります。

この事前チェックを行う事で、少しでも現在稼働中のシステム対応の判断材料になっていただければ幸いです。

【参考文献】
※1 経済産業省「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」(2018年9月)
※2 IPA「レガシーシステムモダン化委員会 総括レポート」(2025年5月)
※3 レバレジーズ株式会社「レガシーシステムの刷新に関する調査」(2025年6月)
※4 一般的なシステム保守費用の相場:開発費の約15%/年

【関連記事】
システム改修・作り直しの判断をした後に:

• 【知らないと損】システム導入で失敗する会社の3つの致命的な共通点
  https://trans-it.net/news/post_119.html
  新規構築や全面作り直しの際に失敗しないための教訓

• システムを現場で定着させるには?『使いたくなる』仕組みを設計する6つの鍵
  https://trans-it.net/news/post_120.html
  改修後のシステムを確実に現場に定着させる方法

【関連する導入事例】
システム改修・刷新の実績について:

• 【愛知の自動車製造業様】不良品発生状況を即時把握できる可視化システム構築|他社システム改修プロジェクト
  https://trans-it.net/works/post_49.html
  使いづらかった既存システムをデザイン刷新し、現場で活用されるシステムへ改善

• 【名古屋の会員制イベント企業様】イベント募集SNSアプリのリニューアル開発
  https://trans-it.net/works/post_54.html
  他社開発システムを引き継ぎ、全面リニューアルで会員数10倍を達成

【サービス案内】
当社の具体的な改修アプローチについては:
→ [他社システム改修・引継ぎサービス]

ブラックボックス化したシステムの調査・引継ぎ相談

一覧へ戻る

Contact

システムやセキュリティに関する不安やご相談はこちらから。どんなことでも構いません。まずはお悩みをお聞かせください。

お電話からのお問い合わせ

052-228-6443

受付時間/10:00~18:00(土日祝休)