システム延命の損益分岐点:「改修」か「作り直し」か?プロが教える3つの判断基準

世の中、保守されておらず、ずっと稼働しているシステムはかなり多いと思います。
社内で「システム改修が必要だ」と言われたとき、「まだ使えるから放置してもいいのでは?」「本当に今やるべきか?」と疑問に感じる経営者の方は多いのではないでしょうか。
今回は、動いているシステムを放置する最大の落とし穴と、「改修」と「作り直し」の判断を間違えないためのプロとしての視点をお話ししたいと思います。
「動いているから大丈夫」とずっと放置していると、後に大きなコストを招くことにもなりかねません。
自社のシステムがどういう状況なのか一度、以下の観点で確認してみるといいと思います。
1. 放置が許される境界線と、許されないリスク
大きな声では大々的には言えませんが、個人的には、完全クローズドな環境で特に業務に支障が出ていなければ、無理に手を付けなくてもいい場合もあります。
逆に、手を付けることで、落ち着いていたトラブルが多発するようになることもあるからです。
しかし、以下の場合は放置は厳禁です。
改修するか、作り直すかの判断が必要になります。
周辺環境への依存度が高い場合:
システムを動かしているOSやブラウザなどの周辺環境に依存している場合、周辺環境の仕様が変われば、間違いなくシステムは動かなくなります。
オープンなシステムの場合:
当然、セキュリティ面での改修は必須です。
表面上は穏やかに見えても、見えないネットの裏側では不正アクセスを目的に、脆弱性が無いか探りを入れる何千何万何十万ものアクセスが発生しています。
セキュリティホールを突かれたら取り返しのつかない大きな痛手を被ります。
スマホアプリの場合:
スマートフォンアプリは、OSがガンガンバージョンアップしていくため、動いているからと放置していると、いざ改修しなければという時に改修コストが感覚的に3倍になることはよくあります。
放置していると、改修では対応できないレベルの修正、つまりほぼ作り直すようなことになりかねません。
弊社のお客様も構築したアプリを3年間、放置した結果、全てを作り直すことになりました。
2. 見過ごしてはいけないシステム改修の具体的なSOS
「動いているから大丈夫」という考え方のままいくと、後に大きなコストを招く場合があります。
システムは、以下のようなサインで「SOS」を発しています。
自社のシステムがどうなっているのかチェックしてみましょう。
改修が必要な「具体的なSOS」チェックリスト
■ 効率性・安定性の問題
・動作が重い、現場の作業が手作業に逆戻りしている。
・エラーが多い、設計上ヒューマンエラーが起きやすい仕組みになっている。
■ 環境・依存性とセキュリティの問題
・OSやブラウザのバージョンアップなど周辺環境に依存している。
・オープンなのにセキュリティ対策が不十分。
■ 企業が見落としがちな「隠れた危険なポイント」
これらの目に見える問題に加え、特に危険なのは、慣れの問題として扱われることで、使いづらさ自体がスルーされてしまうことです。
・ブラックボックス化:
担当者が辞めて誰も全体像を把握できていない。
・外部連携の老朽化:
連携先のシステム変更により、いつの間にか連携できなくなっている。
・慣れによる業務の非効率化:
古い業務のやり方に合わせたシステムがいまだに稼働しており、システムの都合に合わせて非効率な業務を強いられている場合。
システムではなく、あくまでもビジネスに合わせるのが鉄則になります。
不要な人件費がかさむくらいならシステム改修を行った方が長期的な目で見ると安上がりです。
3. 修理か?作り直しか?判断の境界線
「改修」と「作り直し」は、中長期的なコストとリスクを見て判断すべきです。
■ 修理で済むケース
既存のデータ構造を大きく変更しなくても実現できるものは、修理でいけそうです。
・画面の作りだけを見直したい、デザインを刷新したい。
・処理速度を上げるためにチューニングするだけで済むような場合。
■ 作り直しが賢明なケース
・構築費に迫るコスト:
改修費用が構築費に迫るようなら、作り直したほうが賢明です。
・土台が腐っている:
改修してもいつまで経ってもバグが直らず不安定なシステムは、そもそも土台が悪い可能性があります。
・誰も中身を理解していないシステム:
当初、携わっていた担当者が退職し、ドキュメントも一切ないシステム。
何かの拍子で動かなくなる可能性があるため、ビクビクしながら使うことになります。
・業務の非効率化:
古い業務のやり方に合わせたシステムが稼働しており、システムの都合に合わせて非効率な業務を強いられている場合。
システムではなく、あくまでもビジネスに合わせるのが大前提です。
4. プロが教える、改修前に絶対にやるべき事前チェック
改修したいと考えるということは、業務とシステムのズレが出てきたからだと思います。
まずは、最適な業務の理想は何かを考え直したいですね。
システムはあくまでビジネスを前に進めるための手段でしかありません。
システムにビジネスを合わせたら、本末転倒となります。
【事前チェックの3ステップ】
業務整理と理想の追求:
最適な業務フローの理想を考え、その理想と現在のシステムのギャップを明確にする。
土台の健全性チェック:
・改修するシステムの土台が腐っていないか確認する。
・システムが利用しているOSやミドルウェアのサポート状況、ドキュメントの有無も大切。
・そもそも土台となる部分に脆弱性がないかセキュリティ診断でチェックする。
コストとリスクの比較:
・作り直しと改修、それぞれ見積もりを出す。
・両者の中長期的なコストやリスクを考えて、最も費用対効果の高い方を選択することになります。
この事前チェックを行う事で、少しでも現在稼働中のシステム対応の判断材料になっていただければ幸いです。