中小企業のDX、何から始める?システム導入より先にやるべき5つのコツ

更新日:2025年12月21日
はじめに:DX=高額システムという誤解
「DXには数百万円の投資が必要」 「専門知識がないと無理」 そんな誤解をお持ちではありませんか?
実は、DXの第一歩は月額数百円のツールから始められます。
実際に、Google Workspace(月額800円〜)やChatwork(月額700円〜) といった低コストツールを活用し、着実に成果を上げている中小企業が 増えています。
東京商工会議所の調査では、デジタル化に取り組んだ企業の81.0%が 「業務効率化」の効果を実感しています。
この記事では、予算がなくても今日から始められる、実践的な 5つのコツをご紹介します。
1. コツ1:DX化すべき業務を見極める —「非効率の排除」という視点
デジタル化しなくても、もともと高効率な業務はDXする必要はありません。
我々が最初に始めるべきは、最も時間のかかっている箇所やミスが多い箇所、属人化している箇所を注意深く見つけることですね。
「どこが非効率か?」を判断するために、まずは現状の業務に対し、「現在、どのような時間が掛かって、どのようなミスがあるのか」を観察することから始めます。
「今までこれでやってきたから」という理由で、今までの手順で行うことが当たり前になっているような業務は、なかなかDX化して業務効率を上げようとも思っても腰が重いことがあります。
しかし、DXとは、その「当たり前」という固定観念を打ち破り、非効率な仕事はやらないという意識変革から始まります。
【DX化すべき業務を探す5つのコツ】
特にDX化を進めることで、社員のモチベーションと生産性が向上する業務を探すためのチェックリストをご紹介します。
まずは1週間、チーム全員に「どの業務に最も時間がかかっているか」を記録してもらいましょう。
最も多く挙がった業務TOP3が、皆さんの会社の最優先DX対象です。
(1)データ消失のリスク:
ちょっとでもミスをするとデータが失われてしまったり、元に戻せないような業務がないか?
(2)同時操作のロス:
複数の人数で同時に操作するような業務がないか?
(※エクセルファイルなどを複数人で共有している場合など)
(3)不毛なコピペ・手入力作業:
データを手動でコピペしている、または毎回同じ情報を手入力しているなど、モチベーションを奪う不毛な業務がないか?
(4)経営判断を遅らせる業務:
売上、部門別利益などの会社の数字を把握するのに、毎回、多くの時間かかり、意思決定のスピードを鈍らせている業務がないか?
(5)顧客の手待ち時間:
お客様からの問い合わせ対応や見積もり作成に時間がかかり、レスポンスを遅らせる業務がないか?
2. コツ2:非効率を生むルールを見直す
「高額なシステムは不要」というからには、具体的に何をすべきか?
それは、特定した非効率な業務に対して、「最も安価で、最も簡単にできる仕組み」から導入することです。
システムを入れる前に、まず業務ルールそのものを変えることが重要です。
【やるべきこと】
以下を参考に「この業務は必ず○○で記録する」「口頭での依頼は禁止」など、小さくても明確なルールを1つ作ることから始めましょう。
① ルール変更とドキュメント化
非効率なタスクを禁止するルールをまず設定する。
(例:口頭ベース、紙ベースの申請など)
② 属人化を解消する
属人化している特定の個人のノウハウを、WordやGoogleドキュメントに書き出し、共有する。
(これがDXの最初の資産となります)
3. コツ3:低コストのツールで小さく始める
いきなり高額なシステムを導入する必要はありません。
まずは月額数千円以内の低コストツールで試してみましょう。
以下の内容を、まずは1つの部署で1ヶ月間試験導入し、効果を測定してから全社展開を判断しましょう。
失敗しても損失は小さく、学びは大きいです。
① クラウド共有ツール
Excelで共有しているファイル(同時操作ロス)を、GoogleスプレッドシートやOffice 365などのクラウド共有ツールに移行する。
② コミュニケーションツール
簡単な承認作業に、SlackやChatworkなどの「承認スタンプ機能」を使うなど低コストのITツールを活用もいいですね。
(承認作業は遅延の原因になります)
4. コツ4:評価基準を「時間」から「完了」に変える
これらの行動は、大きな予算を必要としません。
しかし、最も重要なのは組織の意識改革です。
① 評価のルール変更
「時間」ではなく「完了」を評価するルールを徹底し、無駄な作業を排除する意識を現場に根付かせる。
月次会議で「今月の業務改善ベスト事例」を発表する時間を設けましょう。
小さな改善でも称賛することで、DX推進の文化が育ちます。
・「何時間働いたか」ではなく「何を完了したか」を評価
・ 無駄な作業を削減した人を高く評価する
・ 効率化の成功事例を社内で共有する文化を作る
5. コツ5:完璧を目指さず、小さな成功体験を積み重ねる
DXは一朝一夕には実現しません。
重要なのは、小さく始めて、成功体験を積み重ねることです。
実は恥ずかしながら、システム会社の弊社でもDX化が遅れている業務は多数あります。
今までやってきて「当たり前だから」という風潮は弊社の中にもあり、外部からの指摘やデータが欠損してはじめて、まずいと気が付く事があります。
また、特定の単価の低い「作業」に足を引っ張られ、より高価な作業が滞るようになり、DX化の必要性に気が付きます。
しかし、弊社は、DX化に取り組むスピードは比較的早く、気が付いた時点ですぐに改善が行われるのはよいところです。
既存業務のやり方自体に価値を見出していないことや、当然ながらDX化に抵抗がないのがその理由ですね。
まさに、この「非効率な仕事の進め方は嫌だ」という柔軟な姿勢こそが、未来の価値を生むDX推進の最強の原動力だと信じています。
例えば「70点の改善」でスタートし、3ヶ月後には80点、半年後には90点を 目指すイメージです。
実際の改善効果は業種や導入内容により異なりますが、 小さな成功を積み重ねることで段階的な成長が可能です。
【例えば】
・月報作成時間:4時間 → 2時間 → 1時間(6ヶ月で75%削減)
・入力ミス件数:月20件 → 10件 → 5件(半年で75%減少)
・ 1つの改善を実行 → 効果測定 → 次の改善へ
・ 失敗を恐れず、小さく試して学ぶ
・ 3ヶ月ごとに振り返り、成功事例を共有
【実践編】今日から始める3つのアクションプラン
5つのコツを理解したら、次は実践です。
以下の3ステップで、今日からDXを始めましょう。
ステップ1:今日できること(所要時間:30分)
[ ] この記事のチェックリストで、社内の非効率業務を1つ特定する
[ ] その業務に毎週どれくらいの時間がかかっているか概算する
ステップ2:今週できること(所要時間:2-3時間)
[ ] 特定した業務について、チームで話し合う
[ ] ルール変更や低コストツールで改善できないか検討
[ ] 試験的に導入するツールを1つ決定
ステップ3:今月できること(継続的)
[ ] 決定したツールを1ヶ月間試験導入
[ ] 改善前後の効果を記録(削減時間、ミス減少数など)
[ ] 次に改善すべき業務を決定
まとめ:まずは大きな予算を組む前に、小さく始めよう
皆さんも、まずは、大きな予算を組む前に、小さな非効率な業務を特定し、それを変革することから始めてみませんか。
この小さな一歩が、3年後、5年後の皆さんの会社の競争力を大きく変えていきます。
「いつかやろう」ではなく、「今日から始める」——それがDXの第一歩となります。
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