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2025.11.17

AI導入の失敗学(3):最も分厚い壁「ビジネスモデルの壁」の壊し方

前回まで、AI導入を阻む「業務プロセスの壁」や「組織・文化の壁」について、現場の視点から解説してきました。
しかし、これらの壁をすべて乗り越えても、最後に立ちはだかる、最も大きく分厚い壁があります。
それが、経営の根幹に関わる「ビジネスモデルの壁」です。

これは、現場レベルでは決して壊せない、トップによる自己否定の覚悟が問われる問題です。


1. なぜAIは既存ビジネスを「敵」にするのか?
AIやDXの導入に後ろ向きにならざるを得ないケースは、現行のビジネスモデルを採用している限り、存在します。
なぜなら、AIが優秀すぎると、既存の収益構造を自ら削りに行く行為につながりかねないパターンが存在するからです。

これは、主に以下の2つのパターンで顕著に現れます。

① 時間単価依存型(AI導入が「売上減」に直結するパターン)
AI導入に対して経営的な旨味が一切見出せないケースです。
構造的な問題:
契約が「時間単価」や「人日単価」で結ばれているビジネスモデルでは、AIを導入して効率化が進むほど、顧客から「もう人はいらない」と要求され、売上そのものが減少してしまいます。
ケース例:
派遣会社、あるいは時間精算型の設計・受託開発などです。

② タレント・ブランド依存型(「知識の独占」と付加価値の曖昧化)
AI導入によって、自社のブランドが持つ価値が崩壊するリスクがあるケースです。
構造的な問題:
「優秀なタレントがいるから高い」という人に依存したブランド構造を持つ企業です。
AIが複雑な知識やノウハウを瞬時に処理できるようになると、顧客は「なぜこの情報を得るのに高い専門料金を払うのか?」と感じ、知識の独占という付加価値が消失します。
ケース例:
コンサルティング会社、社労士、弁護士など、専門家の知識や経験そのものが高単価の源泉となるビジネスです。


これらの「AIを導入すると、既存ビジネスにマイナスの影響がある」という壁は、現場レベルでは決して壊すことはできません。


2. 「ビジネスモデルの壁」はトップにしか壊せない
これらの壁は、現場担当者や部門長には絶対に壊せません。
なぜなら、彼らに「会社の収益構造を自ら否定せよ」と要求しているのと同じだからです。

丸投げの失敗例:
経営者が「AIについて調べて、一番いいやつを社内に導入しといて」と右腕ポジションに丸投げしがちです。
しかし、ビジネスモデルの組み換えができない右腕は、現場と経営の板挟みで疲弊するだけになります。


3. 未来を創るための「リーダーの覚悟」
今後のAI時代を生き残るには、この壁を突破し、その向こう側へ行くしかありません。

AIが効率化によって削ってしまう売上を補填し、タレントの価値を維持するために、すべてのビジネスモデルが取るべき戦略があります。
それは、社員が単なる作業者や知識提供者から脱却し、「生成AIだけでは賄えない人間としての価値」を提供していくことです。

具体的には、さらにお客様とのコミュニケーションを密にし、潜在的なニーズを素早く見つけ出し、課題解決に繋がる提案力を磨いて「戦略的なパートナー」へと進化していくことです。

この人間的な付加価値の創造こそが、AI時代におけるすべてのビジネスモデルの唯一の未来だと確信しています。

ビジネスモデルの組み換えはトップにしかできません。

私も社員の皆さんのITスキルだけではなく、コミュニケーション能力を磨き、人間としての「在り方」を高めていただきたいと考えています。
そして、その向こうにある「新たな価値」をお客様に提供していけるような、皆さんになって欲しいと願っています。

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